埼玉のラルプ・デュエズ

前回の妻の書き込みにも出た「小島ぶどう園」さんですが、ありがたいことに何年も通っているうちにしっかりと顔を覚えていただきまして。
そこのお母さんが「ここはとても良い所だったから自転車で行ってみたら?」と言っていろいろな観光スポットを教えて下さるようになりまして、我々夫婦も喜んでその恩恵にあずかりましてあちこちツーリングさせていただいてます。
観光上手なお方でして、教えていただいた場所は確かにどこもハズレがなく楽しませてもらっています。本当にありがたやありがたや。

ですが、先日お伺いした時のお話の切り出し方はいつもとちょっと様子が違っていました。
まず開口一番で口ごもるように「ええと…あなた方は自転車で坂を登るのって好きなのかしら?」と。
返答をためらう妻を放置して「もちろん♪」と答えますと、それならと言って春先に訪れてとてもきれいだったというときがわ町の「椚平(くぬぎだいら)」という場所を教えて下さいました。
山桜とツツジが大変美しかったそうで、しかもそこには地元の美味しいうどんを食べられるお店まであるとか。見どころと食いどころが揃っているなんて、これはもう行ってみない選択肢はありえないじゃないですか!!
「でもちょっと坂がキツいのよねぇ…」という呟くようなお母さんの修飾語も全く気にならず、帰宅後にさっそく「椚平」を検索してみました。

するとその椚平、春先の桜の見事さと並んでもうひとつ、まさにこの時が見ごろを迎えている「シュウカイドウ」という花の見事な群生地としても有名だということが解りまして。
このタイミングでのこの巡りあわせはもはや我々夫婦が椚平に呼ばれてるとしか思えません。
妻にそのシュウカイドウの事を教えると妻も「それは見てみたい」となりまして、かくして椚平ツーリングが決まりました。
せっかくなのでご近所にある同じく有名な観光名所「慈光寺」も回ってこようという満足プランを打ち立てました。

ところが。
「あのお母さんは坂がどうだとか言ってたけど、どんなもんなんだか…有名な峠とかじゃなくても、まぁ誰かがブログにでも書いていてくれたら参考にはなるかな」という程度の軽い気持ちで「椚平_自転車_坂」と検索をかけてみましたらば、なんとまぁ出るわ出るわ数多くの方々によるブログ記事。しかもそれぞれが「制覇!!」だの「挑戦!!」だのと言った物騒な枕詞を伴うタイトルばかりです。
この時点で「え…あれ?」とナンカチガウ感がにじみ出てきまして、さらに調べてみますと…。

さて、世界でもっとも有名な自転車レースと言える「ツール・ド・フランス」。
自転車に興味がなくてもその名前は聞いたことがある、という方も少なくないのではないでしょうか?今までに数限りない名勝負を生み出した、世界中に熱狂的なファンを持つ歴史ある大会です。
そのツール・ド・フランスの中でも「顔」とも言える有名スポットとして「ラルプ・デュエズ」という場所があります。アルプスにある風光明媚な景勝地なのですが、ツール・ド・フランスにおいてその地を通る部分が「激坂」として知られているのです。
その名が指すものを、町の名前というよりもはや坂の名前としてとらえている人も多いと思われる、それが「ラルプ・デュエズ」です。
その名前はいつしか激坂の代名詞としても使われるようになり、誰が言うでもなく各地に「~のラルプ・デュエズ」の名を冠せられる坂が生まれることになります。
そして、「埼玉のラルプ・デュエズ」といわれる坂こそがその椚平へと登る坂そのものでした。

どこかに「埼玉のラルプ・デュエズ」と言われる坂があるらしい事は知っていましたし、いつかチャレンジしてみたいとは思っていました。
それがこんな思いがけないタイミングで出くわすとは全くの予想外。なんという事でしょう。
先達者の方々のブログを読むと、さすがのその名に恥じないかなり攻略しがいのある難敵の様でして、ワクワクが止まりません。

喜び勇んでさぁいざ行かん、といきたいところですが、いくらなんでもさすがに妻には無茶すぎる坂である事も事実。
シレッと出発して黙って登らせて
「いやぁキツかったねぇ、こんな坂があるなんて知らなかったよ。ゴメンゴメン」
(ノ≧ڡ≦)テヘペロ
とやる事も9割ぐらい本気で考えたのですが、なけなしの罪悪感が辛うじて仕事をしてくれまして。
妻には正直にラルプ・デュエズの説明からすべてを話し「どうする?やめとく?」と訊いてみました。

すると思いがけず妻から「ダメなら歩けばいいんだし、シュウカイドウ見てみたいから行こう」との前向きな返事がかえってくるではありませんか。
妻がそう言ってくれるのならもう何も問題はありません。「いやぁ…そのクラスの坂だと自転車を押して登るのもキツイってレベルなんじゃないかな…」などという考えはきっと余計なお世話というものなので口には出さず、シュウカイドウとうどんを楽しむラルプ・デュエズ挑戦ツーリングの決行です。

まずは自宅から北西に進み、坂戸市からは物見山に登りたいのをグッとこらえて鳩山町方面へ抜けてときがわ町へ。
出発して1時間ほどは車どおりも多い大きな道を行くだけなのであまり楽しくはないのですが、鳩山町あたりからはだんだん景色もよくなってきて道の雰囲気も変わってきます。
個人的にはそうなってからが「サイクリング」のスタートだと思っています。こうなると楽しい。

そうこうしてるうちにときがわ町に。
ときがわ町に入ったら第一の目的地「慈光寺」へと行くのですが、この慈光寺も結構な坂の上にありましてコレでまず第一の登りです。
県道172号線から「宿」という信号を曲がって慈光寺への道を登るのですが、しょっぱなにまずガツンとした斜度がきます。視覚的にも肉体的にもいきなりビビらされますが、このスタートを乗り超えれば登頂は可能な登りでして、私はもとより妻も足つきなしクリアが出来ました。

ヨメ
ヨメ

慈光寺の坂は私でも登れました。

「三つあるってことだけど、二つくらいは足つきなしでイケるかも?」と

この時は思っていました。

ヨメ
ヨメ

慈光寺、大きそうだったので、今度時間をかけてみたいです。

 

ヨメ
ヨメ

慈光寺門にあった古いお墓群。こんなお墓を立ててもらえる人は皆から尊敬されていたんだろうなぁ。

慈光寺をあとにしましたらいよいよ埼玉のラルプ・デュエズに挑みます。
慈光寺からはわずか10分ほどで麓のスタートポイントに到着しまして、いよいよです。

まずいきなりの斜度に襲われます。初っ端からハードです。
それでもついさっき登った慈光寺坂のおかげで「フフフ、この最初の難所さえクリアできればあとは登れるに違いない」と根拠なく思いますが、コレがまたとんでもなく勘違いもいいとこでした

峠にしろなんにしろ、普通の坂ですと登頂までにいくつかの緩急を含んでいるものでして、苦しいながらも途中で息を整えたり脚を休ませたりができるものなのですがこの坂には「緩」がない。
「急」か「激急」かで構成された至極のドM仕様な坂でした。
頑張ってペダルを踏みこもうとしてハンドルを引き付けると前輪が浮きそうになる斜度もありました。前かがみの体勢でジワジワと進むしかありません。
ここまでくるともう坂じゃなくて壁。比喩でも何でもなく、ハンドルに覆いかぶさって路面を直視していると、登っている地面というよりもそびえ立っている壁に見えてきます。いやもう、ないわ、この坂
もちろんギアはとっくに最も軽いインナーロー、売り切れ完売。
無我の境地でじりじり、じりじりと木立に覆われた日陰の細道を必死で登っていますと、ようやく頭上の枝が切れて空が見えてきました。この坂のゴールとされている駐車場脇のY字路に着いた…のですが坂はまだ前方に向かって続いています。
「どうせなら完全クリアを!!」と意地で登り続けてさらに数メートル。
ついにてっぺんに辿り着きました!!
埼玉のラルプデュエズ、クリアしました!!!!

ヨメ
ヨメ

ダンナが「いやっほう~!」みたいな感じで行ってしまうのを見送りつつ、速度がガンガン落ちていくのを哀しく思っていました。時速20キロ→10キロ→5キロ。最初の勾配はなんとか登れましたが、漕げども漕げども登り、登り。最後はペダルがまわせずヨレヨレで足つきました。

で、自転車を押しつつ登るんですが…何度も足が滑ります。なんだ、この勾配!自転車押しててもツライんですけど!

 

しばらくはまともに呼吸も出来ずにいました。さすがはラルプデュエズの異名を持つ坂です。
さっきも書きましたが息を抜けるポイントがないのがキツいキツイ。レストタイムのないインターバルトレーニングみたいなもんです。手ごわかった~。

やがて息も整いまして、ちょっと戻って駐車場脇にて妻を待ちます。
「さすがに(妻は)足つきなしは無理だろうなぁ」と思って待っていますと、姿が見えてくるより先に木立の間から

やってらんない…冗談じゃない…自転車でなんか…登れるわけないじゃんこんな坂…冗談じゃない…

ブツクサと悪態が近づいてきました(笑)。
やはり途中で何度か歩いたそうですが、それでも最後は頑張ってペダルをこいで登ってきました。
足つきなしとはいきませんでしたが、妻もなんとか登り切りました。
おつかれさま~。

しばらく休憩してから、第一のシュウカイドウ群生地を経て昼食に向かいます。
さてさてシュウカイドウは…と思っていましたが、時期がわずかに過ぎてしまっていたのか第一ポイントではほんの数輪しか花を見つけられずにちょっとガッカリ。あらら。

帰路の第二ポイントに期待をかけようとその場をあとにして「くぬぎむら体験交流館」へ向かいます。ここでいただけるうどんがとても美味しいらしいのでとても楽しみにしていました。
ここがまた急な坂の上にありまして、再び妻の悪態がときがわの山に流れるという一幕を挟みつつも無事に到着。
廃校になった校舎を改装した建物もそこからの景色も、どちらも素晴らしい所でした。

ヨメ
ヨメ

あんまり歩いてばかりなのも癪なので、「くぬぎむら体験交流館」前の坂はがんばって自転車で登りました!

 ←結構な坂でした。

 

そしてお待ちかねの「ひもかわうどん」。
地元の方による手打ちのうどんで、わんさかと具が入ったけんちん汁に幅広のしっかりとしたうどんが煮込まれています。
ボリュームもがっつりと、とても美味しい逸品でした。

お腹も満足したら、腹ごなしにのんびりとシュウカイドウ第二の景勝地へ。
先刻のガッカリがありますので「ちょっと時期を過ぎてるみたいだし、あまり期待しないで行こう」と話しながら向かいましたら、やがて見えてきた可愛いピンクがまき散らされた山肌。
「アレだ~!!」
最盛期は過ぎていたようですが、なんとか見ごろには間に合ったようです。

金網の柵は、何年か前に蕾が鹿に大量に食べられてしまう「鹿害」が起こったからその予防のためだそうです。
私たち夫婦の世代にはお馴染みの某大ヒット少女漫画でその名前だけは知っていた「シュウカイドウ」という花ですが、実は私も妻も実物を見るのは初めて。独特な形をした、ピンクの花弁と黄色い芯を持つとても可愛い花でした。
山肌に広がる様は見事でして、妻も「ここまで登ってきた甲斐がある」とご満悦の様子。
ああ、時期に間に合ってよかった。

ここからは家路に就きます。妻には残念、私には最後のお楽しみでもう一つの坂を登ります。
「埼玉梨花カントリークラブ」というゴルフ場脇を抜ける坂を経て越生町・鶴ヶ島市を通って帰宅というコースです。
こちらはこちらでなかなかに手ごわい坂ではありましたが、ラルプデュエズに比べればなんのその。
本日三本目の坂も足つきなしで登れました。

少し待っていると遅れて登ってきた悪態妻と合流。
妻は午前中の坂でもう足がかなり疲れていたらしく、またしても途中で足をついてしまったとか。
正直、ラルプデュエズを挟まずにこの坂単品だったら今の妻ならクリアできると思うんですけどね。
まぁそのへんは今後の課題ってことにしましょう。フフフ。

その後はきれいな景色を楽しみつつ山を下りました。やっぱりこういう景色を楽しめるからこそ自転車は気持ち良いです。

距離がほどほどだったのと割と早めの出発だったおかげで16時過ぎには帰宅できました。
翌週に今年最後のトライアスロンを控えての脚の酷使はどうだろうかとも思いましたが、やっぱり行ってよかった。楽しいツーリングとなりました。
自転車が気持ち良い季節がやってきました。
さてお次はどこに…♪

コメント

  1. […] 実はこの日のライド、冒頭で書きました様に我々夫婦というイレギュラーでバッサリと予定を変更してもらっているのですが、「お昼は椚平でひもかわうどん!!」というのはゆるぎない事実として確定していたのです。かつて我々夫婦が挑んだ「埼玉のラルプ・デュエズ」のてっぺんにある、「くぬぎむら体験交流館」で食べられるうどん。 […]

  2. […] 山のてっぺんにあるくぬぎむら体験交流館へはもう何度も行って美味しいひもかわうどんを食べてきましたが、本日はそこまで登りません。以前嫁と二人で行った秋海棠の群生地へと登っていくつづら折り、Iさん曰く「くぬぎのいろは坂」を登ります。 […]